大切な家だからこそ、「人に貸す」という選択。
- 空き家
オーナー事例 山田孝夫さん・和子さん
夫妻の元自宅
(小松市)
山田孝夫さん・和子さん夫婦。2013年に引っ越して来た新居にて。
37年間を過ごしたマイホームからの引っ越し。
- 昭和54年当時は新興住宅街だったエリアに土地を購入し、家を建てた。
長年暮らした思い入れのある住居、住む人がいなくなってからも「もしかしたら子ども達が帰ってくるかも」「売ってしまうのは忍びない」といった理由から、長年空き家のままにしている方も多いのでは。
今回は、かつての自宅を「空き家バンク」に登録し、現在賃貸物件として貸し出している小松市の山田孝夫さん・和子さん夫妻(70代)のご紹介。
「家として残したいのであれば、すぐに貸した方が良い」と2人が声を揃える理由をうかがった。
山田さん夫妻は退職後、本格的に畑仕事をしたいという孝夫さんの想いもあり、現在の林町に新築を建て、2013年11月に引っ越してきた。
「それまで暮らしていた家は昭和54年築。水回りに関しては平成に入ってからリフォームをしたので状態も良く、壊してしまうのはもったいないと思っていたんです」と話すのはご主人の孝夫さん。
「息子達も現在は県外で暮らしていて、今後特に小松に戻ってくる予定もないので売ってしまおうと」
空き家は予想を上回るスピードで劣化する。
当初は、土地ごと建物を売却するつもりで民間の不動産会社に依頼していたが、なかなか買い手がつかないまま、2年の月日が流れる。
しかし一方で、空き家の状態は目に見えて悪化していったと、和子さんは話す。
「引っ越してからも、草むしりや換気のために、定期的に足を運んではいたんです。けれど、2年目に入ってから、床が軋んできたり、途端に家の状態が悪化してきて。人の気配がなくなると、家の劣化はこんなにも早まるものかと、正直驚きました」
そして引っ越してから3年目に入った2016年2月、契機となる便りが小松市から届いた。それは空き家にまつわるアンケート依頼で、孝夫さんはそこで初めて市が運営する「空き家バンク」の存在を知った。
「それまでは、そんな仕組みがあることも全く知りませんでした。意外と私達のような方も多いのではないでしょうか」
そして、すぐに市役所の窓口に行き、空き家バンクについての詳細の説明を受け、ほぼ即決で登録に至った。
空き家バンク掲載後、約3ヵ月で契約へ!
空き家バンクのサイトに掲載してからの反応は早かった。すぐに数件の問い合わせがあり、登録から約3ヵ月後の2016年6月には賃貸の契約が決まった。また、小松市では空き家を改修する際、補助金も出るので(改修費の1/2:上限40万円まで)空き家バンクに登録する際、一部リフォームも加えた。
「契約に関しては不動産屋さんにお願いしているので、直接私達が借り主さんにお会いしたことはありませんが、県外から転勤して来られたご家族とうかがっています。私達としては、入居してくださる方が決まって、本当にホッとしています。住んでくださるだけで、“管理”していただいているようなものですから」と和子さんは安堵の表情を見せる。
「家は、常に“ひと気”があることが何より大切なんだと改めて気づかされました。サラ地にするなら別ですが、家として残したいのであれば、すぐに貸すなり、手を打った方が良いと思います」と孝夫さんも頷く。
「空き家を売る」ということに抵抗のある方は、まずは賃貸として貸し出す手もある。とにかく「誰もいない期間を長くつくらない」ということが重要なようだ。