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空き家活用事例集

山本豊子さん

目の届かない距離にある空き家のリスク

空き家
オーナー事例

県外在住の空き家
オーナー・山本豊子さん
(輪島市)

輪島の目抜き通りから少し離れた商店街の並びに建つ。

転勤や結婚、両親や親戚からの相続など。空き家の中には、様々な理由から持ち主が県外で暮らしている例も少なくない。
しかし、老朽化や防犯の観点からも、目の届かない空き家の管理は、何かと心配事が多いもの。今回は関東在住の山本豊子さんが、輪島市の「空き家データベース」に登録するまでの話をご紹介。

輪島の家は、廊下や柱が漆塗り!
輪島では、廊下や柱が漆塗りの家も多い。写真は「輪島屋善仁 塗師の家」。/©石川県観光連盟
輪島では、廊下や柱が漆塗りの家も多い。写真は「輪島屋善仁 塗師の家」。/©石川県観光連盟

建物は大正時代築。元々輪島塗の行商を生業としていた家で、屋内の柱や廊下は漆塗り。使い込まれて、今なお赤茶色の光沢を放っている。
「輪島の家は、どこもそうだったので、これが当たり前なのだと思って育ちました。県外に出て、はじめて漆塗りじゃないことに驚いて」

山本さんが実際にこの家で暮らしていたのは小学生時代まで。両親の仕事の都合で関東へ引っ越した後、輪島へ戻ることはなく、現在は埼玉で暮らしている。建物の名義は父親だが、すでに高齢ということもあり、手続きや申請関連は豊子さんが代行している。

「空き家仲介は商売にならないから」

当初は地元不動産会社を介して貸し出しており、ここ十数年は遠い親戚の紹介等で貸したが、現在は空き家状態。建物の老朽化を恐れて早々に売却しようと、民間不動産会社を訪ねたこともあったが「空き家仲介は商売にならないから難しい」と断られた。減価償却の関係上、建物自体にほとんど値がつかないケースも多い。築年数の長い空き家物件が不動産流通に乗りにくい背景には、そんな事情もある。

いっそ建物を壊してしまうことも考えたが「建物が頑丈な造りなので、解体するだけでも300万円はかかる」と業者からの回答。また、代々大切に使い継いできた家に対する父親の想いもあり、豊子さんはなんとか建物を残す方向を模索していた。

誰かにとっては宝に変わる可能性。

そんな折、思いがけず輪島市の「空き家データベース」の存在を知る。直近まで貸していた人が置いていった家財やゴミ処分の相談に市役所を訪ねた際に「空き家をお持ちなら、一度登録されてみては」と案内を受けたのだった。
「保険等に入ってはいるものの、やはり空き家のままにしておくのは防犯面でも不安だったので登録しました。能登では大学進学や就職で県外に出た若い方が、戻ってこないというケースも多いです。こういった案件はこれからさらに増えるのではないでしょうか」
登録にあたり、家財やゴミ処分は市役所で紹介してもらったシルバー人材センターに依頼した。専門業者がいない地域では、シルバー人材センターに問い合わせてみるのも有効だ。結局、草むしりなどを含めて丸5日を要したという。

家を壊してしまうのは一瞬だが、漆塗りの建物はもう二度と戻らない。住宅であれ店舗であれ、ある人にとっては宝に変わる物件もある。人目に触れる機会は多いに越したことはないので、まずは市町が運営するデータベースに気軽に登録してみて欲しい。