手島 シークリンデさん
インタビュー
東京で、人気ファッションブランドのPR&プレス(広報担当)として活躍していた手島さん。子供を取り巻く都会の環境に疑問を抱き、2015年に故郷の石川県にUターン。金沢市を拠点に、PR業を中心に女性の起業支援や飲食店のプロデュースを行う会社を起業するとともに、SNSなどで石川、金沢の魅力を発信し続けている。
「子供には、子供の時にしかできない経験を」
「都内で暮らしていましたが、私の幼少期と比べて、子供を取り巻く環境があまりに違うことを痛感させられたんです。上の子から『校庭で遊ぶ上級生のボール遊びが怖くて、外で遊べない』と聞いた時は、『このままでいいのかな』と感じました」と、Uターンするきっかけとなった出来事を振り返る。
高校生まで石川で過ごし、短大進学で上京した手島さん。短大卒業後も都内で就職し、結婚。2児の母親だ。Uターンするまでの8年間はイタリアのグローバルファッションブランドのPR&プレスとして活躍した。
「ファッション業界に長く携わり、東京でできることはやりきったという感じ。私的には大満足、大充実の東京ライフでした。でも、次第に『心の豊かさ』といったものに関心がいくようになって、『ひょっとしたら、地方の方がより生活の質を高められるのではないか?』と考えはじめると、いても立ってもいられなくなって」と話す。
18年振りの故郷での暮らし。「豊かな自然や金沢らしい文化・歴史は、私が子供の頃と一緒。ホッとできます。東京は車通りが多くて、手放しで子供たちを安全に遊ばせられる環境が身近にあったわけではありませんでした。しかし、金沢は違います。自然から学ぶことって、いっぱいあると思うんです。だから、子供達には、子供の時にしかできない体験をいっぱいしてもらいたいし、させてあげたい。東京はとても便利で、すべて効率よく物事が運ぶように感じます。しかし、多少の不便さや、自然の厳しさを体験してこそ、生きる力の強い人間に成長できるのではないでしょうか。待機児童ゼロですぐに保育園に入れられるのも、働くママにとって心強いですよね」。
東京で働くご主人と離れてUターンを決断
故郷へのUターンや地方への移住と聞くと、ご主人が主導権を握り、奥様や子供がそれについていくという姿が思い浮かぶ。だが、手島さんの場合はそうではなく、手島さんと子供たちが先にUターンし、ご主人は東京に残る選択をした。そういった意味では、手島さんのUターンは、新しいのモデルケースと言えるかもしれない。
「Uターンを決めるまで、夫婦で1年ぐらい話し合いました。石川へのUターンと家族が離れて暮らすことのメリット・デメリット、子供の学校・保育園のこととか。でも、主人が『みんなと同じことをする必要はないよ。それより、今しかできないことをするのがいいんじゃない』と後押ししてくれたおかげで、決断できました」。
ご主人が石川に来るのは月2回。「主人も金沢が気に入ってくれてます。何より、こっちに来てからの子供たちのイキイキとした表情に驚いています」。
キャリアを活かして女性の起業を支援
Uターン後に手島さんは、これまでのキャリアを活かして「食・人・コト・モノをコンテンツにローカルからグローバルへ」をコンセプトにしたPRオフィス「OFFICE SCHNEIDER」を設立。飲食店のプロデュースやコーディネートのほか、地元のテレビ番組への出演など、幅広いフィールドで活動。また、移住促進のPRとして金沢市の移住プロモーション動画「金沢美住」(https://www.kanazawa-iju.jp/)にも出演している。「OFFICE SCHNEIDER」は、2018年「株式会社オフィスシュナイダー」として法人化。手島さんのスキルとセンスを活かした、より多彩なビジネス展開が期待される。
「金沢は、まだまだ可能性のある街だと感じています。でも、PRがいまひとつ。そこを補うことで、私たちの存在感が出せると考えています」。
手島さんらしい活動が「女性起業家セミナー」、「パーソナルブランディングセミナー」といった、女性の起業を応援するセミナーの開催。特に、「パーソナルブランディングセミナー」では、世界の一流ファッションブランドで培ってきたノウハウを活かして、「自分自身をどう売り込むべきか」といったPR術を伝授する。
「起業したい」、「前職のキャリアを活かしたい」と独り悶々としている女性も多いことだろう。そんな女性たちにとって、手島さんの存在、生き方は心の支えになるはず。セミナーを通して、参加者同士のつながりができ、異業種のコラボといったことも生まれているようだ。
移住する際は、地元の人から生の声を
手島さんのInstagramには、活動報告だけでなく、何気ない日常やお気に入りのグルメなどが綴られている。SNSをきっかけに、「Uターンするべきか、どうか」で悩む女性から相談を受けることもあるそう。
移住を考えている人に向けては、「まず、観光ではなく、そこで生活するという視点で、現地に何回も足を運ぶこと。そして、いいこと・悪いこと含めて実際に住んでいる人から話を聞くことが大切」とアドバイスする。
これまでは金沢に出店する飲食店のサポートをしてきたが、「いつか自分の飲食店を開きたい」と夢を語る。生まれ育った大好きな街で、手島さんのチャレンジはまだまだ続く。