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特使のご紹介

柿谷 昭一郎さん

柿谷 昭一郎

南加賀地域子ども体験推進協議会事務局長として修学旅行の受入れや、スローツーリズムの企画・運営に取り組む。

インタビュー

柿谷 昭一郎
石川県加賀市出身。54歳まで金融業界に務めた後、地域づくりの現場に転身。廃校活用プロジェクトや、農山漁村において自然、文化、人との交流を楽しむグリーン・ツーリズム等に携わった。その経験を活かし、近年では子供向け体験プログラムの開発や普及に取り組んでいる。

1.地域に人を呼び込んでいく

柿谷昭一郎さんは「南加賀グリーン・ツーリズム協議会」の事務局として、旅行客らが農山漁村に滞在しながら地域の伝統行事や郷土料理などの知恵を学び、山や川といった自然環境を活かした遊びを体験するグリーン・ツーリズム(Green Tourism)の企画・運営に長年携わってきました。

柿谷さんは、グリーン・ツーリズム活動で培った知識や経験を活かし、子どもたちを対象に加賀の農園や里山里海を舞台とした体験型学習プログラムの提供を行う「南加賀地域子ども体験推進協議会」の立ち上げも行いました。観光農園を営むブドウ農家、海や森の生き物に詳しい漁村ガイド、小学生の修学旅行なども手掛ける旅行会社、観光パンフレットの作成を行う印刷会社など、様々な関係者が職業の垣根を越えてメンバーに加わり、日々議論を重ねています。

蕎麦打ちを体験しながら、日本の食文化について学ぶ子どもたち。

この地域の学習材料を柿谷さんに尋ねると、自然環境はもちろんのこと、和菓子、能、陶芸、漆芸、染織、蕎麦打ち、野鳥ウォッチング、漁業など、ありとあらゆる地域資源が子どもたちの学びに活かせることを教えてくれました。

鳥笛づくり体験。吹き方によってはホトトギスの鳴き声を真似ることもできる。

2.移住者と連携し、ここでしか体験できないプログラム開発を

「最近は、地域づくりに関心のある移住者との接点も少しずつ増やしています。

地域に眠る資源を体験学習のプログラムに組み込むには、地域を外から見た経験のある移住者のチカラが欠かせません。そのため柿谷さんは、意識的に時間を割いて移住してきた方と意見を交わす機会を設けています。
「住民にとっては当たり前のことでも、地域外の方には新鮮な経験となることもあります。グリーン・ツーリズムにしろ、子どもを対象にした体験学習プログラムにしろ、せっかく地域を訪れてくれるのなら、ここでしか味わえないような経験をしてもらいたいですね。もしそうした経験がきっかけで、地域への移住を検討してもらえるなら、こんなに嬉しいことはないですね。」
地域での体験の先も見据え、柿谷さんの試行錯誤の日々が続いています。

南加賀こども体験推進協議会のミーティング。若者世代との連携体制やUIターン促進を見据えたプログラム運営について議論している。

3.移住者が地域に溶け込むために

昨今、全国で地方移住を促進する動きがありますが、その一方で気を付けなければいけないのが移住後のケアです。とりわけ移住直後に多い悩みが、交友関係。職場のコミュニティはあるものの、共通の趣味で交流できる住民との接点が少なく、プライベートな時間に地域から孤立してしまうといったこともあります。柿谷さんは、移住の取組は地域への呼び込みだけでなく、移住後の地域への溶け込みまでフォローしていくことが重要だと語ります。

4.健康維持と地域交流を楽しめるノルディック・ウォーキング

移住後に地域に溶け込むには、広範な交友関係を持つ存在に出会うことが大切です。柿谷さんは石川県加賀市において、多くの地元住民と交友関係を持っています。そんな柿谷さんがおススメするのが「ノルディック・ウォーキング(※)」です。柿谷さんは加賀市内でのノルディック・ウォーキングのコース開発にも携わっています。

※ノルディック・ウォーキングとは、両手に持ったポールで地面を突きながら歩くことで、運動効果を高めるフィットネス・エクササイズの一種。通常のウォーキングと比べ、転倒のリスクが低減されるほか、足腰への負担が軽減されるため、より長時間の歩行ができる。

江戸時代に旅人や武士が往来した北国街道を歩き、歴史を感じることもノルディック・ウォーキングの楽しみ。

これまで柿谷さんたちは、加賀らしさを感じられる漁村、山村集落、城下町などを巡るコースを開発してきました。月に1回開催し、毎回20名ほどが参加しています。年間スケジュールを配布して一般募集しており、参加者の8割は繰り返し訪れる常連さんです。SNSでグループを作ることで、リピート参加を促し、コミュニティづくりも意識しているそうです。「毎月コースを変え、ウォーキングのご褒美として、カフェや日本料理屋などの「食」の要素も組み込み、参加者を飽きさせないようにしています。」とコース設定の工夫を柿谷さんは語ります。

日本海を見渡せる「加佐の岬」で、地元漁港に水揚げされた鮮魚を目の前で捌いてくれるプログラム。

参加者のほとんどが古参の地元住民だそうで、「移住者にとっては、健康維持はもちろん、地域での交友関係を構築する機会としても絶好の場となります。たとえば親子3人で参加し、地元のお婆ちゃんから古い風習、伝統行事、郷土食材などの地域文化を教えてもらうといった交流もあります。移住者にもぜひ参加してもらいたいですね。」柿谷さんは人懐っこそうに笑いながら話してくれました。

現在、城下町である大聖寺地区や漁港である橋立地区等を舞台とした体験プログラムを構想中の柿谷さんは、「これからは移住者との連携を深めながら、加賀らしいツアーを作っていきたいです。」と今後の意気込みを語ります。自然や伝統文化に興味のある方は、ぜひ1度柿谷さんが企画するイベントに参加してみてください。