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特使のご紹介

町家 由美子さん

町家 由美子

平成8年に大分県から石川県に移住。平成28年に町家を改築し、一軒家貸切型のゲストハウスを開設。旅行者の宿泊施設とするとともに、地域住民にコミュニティサロンとしても解放。町家活用などをテーマとした移住セミナーの講師として協力。金沢市移住者ネットワークメンバー。

インタビュー

町家を生かしたゲストハウスで、金沢の魅力を発信しながら、移住もサポート

伝統的な金沢町家を活用したゲストハウスを開業した町家さん。大分県から移住した経歴の持ち主で、オーナーとしてゲストハウスを切り盛りする傍ら、町家の活用や県外からの移住のサポートに取り組んでいる。

1996年に大分県から石川県に移住

金沢市野町、観光地として週末は多くの観光客で賑わう忍者寺(妙立寺)から徒歩約5分。藩政時代につくられた寺町寺院群の一角に、町家さんが町家を活かして開業した1日1組限定のゲストハウス「初華 ui-ca」(https://www.machiya-uica.com)は佇む。
大分県佐伯(さいき)市出身の町家さんが石川県に移り住んだのは1996年のこと。町家さんが20代の頃だった。「佐伯は、海があって、山があって、お寿司が自慢で。旧市街には城下町の面影も残っていて、どこか金沢に似た街かもしれませんね」と故郷を語る。
「移住した当初は、冬の『鰤(ぶり)起こし』(※北陸の方言で、本格的な冬の訪れる告げる雷のこと。この雷が鳴ると寒鰤が獲れはじめると言われる)が怖くて、怖くて」と笑うが、『鰤起こし』という方言がサラッと出るあたりは、すっかり金沢の人だ。

金沢の歴史が色濃く残る町家を後世に

2016年7月に開業した「初華」は、明治25年に建てられた築127年の金沢町家。弁柄(べんがら)色や群青(ぐんじょう)色の土壁が、金沢の伝統的な建築様式を今に伝える。ノスタルジーを感じさせる空間は、非日常でありながら、どこか懐かしい独特の空気感に包まれている。「自分自身や大切な人とゆっくり向き合うことで、忘れていた自分を取り戻す場になってくれれば」と町家さん。
その想いは利用者にも伝わっているようで、「家族で過ごし、家族の絆を深めることができました」といったように、評判も高い。
空き家が社会問題化する一方、町家ビジネスが注目されている。「私の場合、ゲストハウスを開業する前に、町家を地域のコミュニティサロンとして開放し、地域の人たちと交流を深めたのがよかった」と町家さん。そんな町家さんの元には、県内外から町家活用の意見を求めに来るそう。
「金沢に移住して、町家に住みたい、町家を使って起業したいと考えている人は多いはず。そんな人たち向けに、町家暮らしが体験できるシェアハウスがあるといいかもしれませんね。金沢の伝統文化の象徴の1つである町家を後世に残す意味でも、町家活用の相談に乗っていきたい」。

同じ女性として移住希望の奥様の相談役になりたい

「金沢の人は、はじめは閉鎖的に映るかもしれませんが、一歩踏み込んでみると、みんなあたたかい人ばかり。金沢は中心市街地に住む高齢者の方々も多く、小さい子どもがいるとかわいがってもらえて。だから地域の方々と一緒に子育てさせてもらっている感覚があります。休日保育や病児保育も充実しているので、育児しながらの起業も可能でした」と自らの経験を踏まえて、金沢を評する。
移住先の地域に馴染めるかどうかは、移住希望者に共通する不安材料であるに違いない。「心配しないで、日常的な挨拶を欠かさなければ大丈夫。田舎すぎず、都会すぎず、金沢はすべてがちょうど良くて。重層的な街なので、さまざまな事情で移住して来られる方も、居心地のいい街だと思います」と町家さん。
一方で、「奥様は、ご主人とは違った不安を感じているもの。同じ女性として、いしかわ移住応援特使として、奥様の相談に乗ってあげたい。はじめての街で、知っている人が一人いるだけで、移住しやすくなると思うんです」とも。

身をもって感じた「横のつながり」の大切さ

飲食店を経営するなど、がむしゃらに走り続け、失敗も経験した20代・30代の教訓として得たのが「横のつながり」の大切さだという。
「ビジネスを進める時に、自分独りではどうにもならない問題に出くわすこともあるかと思います。そうした時に、支えになるのが横のつながりです。外部のセミナーや勉強会などに積極的に参加して、関係づくりをするといいでしょう。移住に関しても同じだと思います。同年代・同時期に移住した人だけでなく、移住した先輩たちとも交流を持つことが、長く定住を続けるコツではないでしょうか」。