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特使のご紹介

高峰 博保さん

高峰 博保

平成25年に、東洋大学の学生受入及び移住促進の受皿組織として能登定住・交流機構を設立。平成28年からは同機構の代表理事に就任。平成29年に設立された加賀白山定住機構では事務局長を務め、日頃から移住希望者からの相談に対応している。

インタビュー

地域は「人」で変わる。だから、移住をサポートします

移住支援の枠組みづくり。人口減少が最も激しい地域からスタート

「移住の仕事に本格的に関わるようになって、もう丸6年になりますね」と話す高峰博保さん。
能登広域エリアでの移住サポートを目的に、民間主導の任意団体「能登定住・交流機構」を立ち上げたのが平成25年1月(平成27年より一般社団法人)。行政単位の移住支援は市町ごとに窓口が異なる中、横断型での窓口の役割を果たします。立ち上げからこれまでに、100件以上の相談に乗り、100人以上の移住につなげました。

これを皮切りに、その後、能登町、加賀市の官民連携の移住促進組織である「能登町定住促進協議会」(平成27年~)や「加賀市定住促進協議会」(平成28年~)、さらに、白山市以南の広域の移住促進組織である「加賀白山定住機構」(平成29年~)の設立にも関わりました。
このうち、能登町は人口減少の激しい能登半島エリアの中でも最も厳しい予測が示された地域、また加賀市は南加賀エリアの中で唯一消滅可能性都市に名指しされた地域です。つまり、能登・加賀それぞれの中で最も厳しい地域に、新たな風を吹き込もうとしています。

「暮らし体験の家」で移住へのステップを

高峰さんが行う移住支援活動では、まず「仕事」を第一に掲げます。それまでの移住支援といえば、自治体ごとの移住助成金の多寡が週刊誌などで半ばセンセーショナルに取り上げられることもありました 。しかし、移住後の暮らしに大切なのは、長期的な視野での収入確保。そこで、「ここにはこんな仕事がありますよ」と、移住後の具体的な仕事を提示し、暮らしをイメージしてもらえるようにする情報提供から始めました。
さらに特徴的なのは、無料のお試し居住施設。第1号の「暮らし体験の家」を能登町黒川に開設して以降、空き家を活用した「暮らし体験の家」は能登・加賀それぞれで複数棟へと増えてきました。移住検討者向けの施設が存在することで、「一度、家族で現地まで足を運んでみようかな?」と思ってもらえます。現地を知り、顔見知りを増やすことで、移住前の不安を払しょくし、また移住後の「こんなはずじゃなかった」というミスマッチを防ぐことにもつなげたいとしています。
これまでの活動の中で、移住を検討していた方からは、「滞在用の拠点があるということが、現地まで実際に足を運ぶきっかけになった」、「住まい探しをするにあたり、滞在用の拠点があって助かった」、「いろいろ相談に乗っていただき助かった」等の感謝の声が寄せられています。

大学生が過疎地域で活動。地域の人に活気が戻った

高峰さんが移住支援活動を始めるきっかけになったのが、「能登ゼミ」です。首都圏の大学生が能登を訪れ、地域の農家を訪ねたり、集落に入って報恩講に参加したり、ブナ林の整備を行うなど、能登のいろいろなエリアを訪ね、能登を学びのフィールドとして様々な活動を行いました。

その後、ゼミ参加者の中から、個人的に夏休みに能登を訪れ長期滞在したり、自分の目で見た能登の姿を多くの人に伝えたいと、冊子に編集して配布する学生が現れるように。さらに、大学卒業後に新卒で能登へIターン就職する例も複数出てきました。
「やっぱり能登はそれほど魅力的な地域なんだ、と再認識するよい機会になりましたね。」
地域に入り、自ら地域の人とふれあうと、地域の最大の魅力は人であることが分かり、そこに住みたくなる。そんな確信から、高峰さんは能登で頑張っている人たちと協力し、前述の「能登定住・交流機構」を立ち上げることになるのです。

一方、ゼミ活動の受け入れに協力し、若者たちと一緒に活動してくれた地域の人たちにとっても、自分たちの地域の良さを見直し、自信を取り戻す機会となり、地域に活気が戻っています。

「人」にこだわり地域振興。そこから移住支援へ

移住支援に取り組む以前は、地域振興のお手伝いをしてきました。県内外の地域づくりや商店街の振興、ショップ開発・商品開発、森づくり活動、ツーリズム事業の提案等、多岐にわたる仕事をしてきた中で、ずっと一貫しているのは「人」が大切という思いです。
 能登半島地震が起こった2007年春に、能登の「人」にスポットを当てた「能登人(のとびと)」を制作、翌年からは震災復興事業の一環でスタートした着地型観光体験プログラム集「能登人と過ごす能登時間」をプロデュースしてきました。「人」に会いに行き、一緒に体験し、時間を過ごしてもらい、地域への愛着を深めてもらおうという企画です。「地域には、ぜひ会ってほしい魅力的な人が大勢います。私も会ってみたいと多くの人に感じてもらいたいんです。」

 

 

能登へ加賀へと日々走り回る高峰さん。車の走行距離は、年間およそ4~5万kmだそうです。「来年こそは本当にそろそろ落ち着いて、あんまり駆けずり回るのはやめようと思っています。でもこの20年、毎年そう言ってますけどね。」
高峰さんの願いは、移住支援をすることで、地域に魅力的な人、会いたい人がもっともっと増えること。自らが地域の担い手として、地域の活動に積極的に関わる人に移住してもらって、ますます地域を面白くしていってほしいと願っています。高峰さんが走り回る日々はどうやらまだまだ続きそうです。