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空き家活用事例集

堂下さん夫妻

お金をかけない空き家活用、「リユースハウス」。

空き家
活用事例

平飼い養鶏場
堂下慎一郎さん、
亜也さん夫妻
(加賀市)

堂下慎一郎さんと、亜也さん。

加賀市では古くより多くの家に「赤瓦」が使われている。
加賀市では古くより多くの家に「赤瓦」が使われている。

赤瓦の家並が続く加賀市黒崎町。裏山や田んぼに囲まれたのどかな集落に、堂下(どうした)夫妻の自宅と養鶏場はある。

2人は「山ん中たまご園」という平飼い養鶏場を自宅のそばで営んでいる。積極的に地元の農産物等を餌に取り入れ、土の上を走り回って育つ健やかな鶏の卵は、地元のレストランやカフェでも引き合いが多い。

結婚を機に、加賀市で新規就農。
ひな鳥の屋舎内で。元気な鳴き声が響き渡る。
ひな鳥の屋舎内で。元気な鳴き声が響き渡る。

妻の亜也さんは大阪出身。「大量生産・大量消費」の価値観に違和感を感じ、自給自足の暮らしを求めて、世界中の田舎を旅していた。旅費を稼ぐためのスキー場でのバイトで加賀市出身の慎一郎さんと出会い結婚、加賀市にIターンする。慎一郎さんは素潜り漁師で、漁が出来ない時期にも食料を確保するため、農家になることを決意。福井県の農業法人で働く中で「平飼い養鶏」に出会い、2015年に新規就農し、「山ん中たまご園」を開く。
現在は慎一郎さんの実家で同居しながら、子ども達2人と200羽程の鶏を育てる賑やかな生活を送っている。

世界中からやってくる“家族のような友人”。
堂下夫妻が借りている物件。
堂下夫妻が借りている物件。

住まいとは別に、すぐ近所にもう一軒夫妻で空き家を借りている。
「この家は『WWOOF(ウーフー)』を利用して、世界各国からやってくる友人達を泊めるための場所として借りているんです」と亜也さんはにこやかに話す。
「WWOOF」とは、有機農家の家にホームステイしてお手伝いをしながら、農業とオーガニックな暮らしを学ぶための仕組み。手伝いの対価として金銭は発生せず、ホスト側は食事と宿泊場所、そして知識を提供する、というのが特徴だ。世界的に利用者は多く、日本だけでも400箇所以上のホストがいる。
亜也さんがWWOOFに登録したのは2016年の6月。登録から一年足らずの間に、ドイツ、アメリカ、台湾、オーストラリアなど、すでに世界中からたくさんの利用者が訪れている。
「私自身、世界中を旅して多くの人に助けてもらったので、何か国際協力ができればと思って始めました。WWOOFを利用してやってくる子たちはすごく能力が高くて、こちらの方が教えてもらうことが多いくらい。また、家族のような友人のような、親密な関係が築けるのも魅力ですね」

「あるものをつかう」という価値観。
2階和室。畳もそのままだが、状態が良い。2階は和室が他に3つある。
2階和室。畳もそのままだが、状態が良い。2階は和室が他に3つある。

宿泊所として借りている物件は家賃が月1万円。元の持ち主は、高齢のため介護施設に入ることになり、親族も加賀に戻る予定はなく、財産処分のために売却されたもの。現在は近所の人が購入・管理し、亜也さんに格安の家賃で貸して出してくれている。

「改修は一切していません。主人の父が大工で、色んな現場から家具などを拾ってきてくれるので、ありがたく使わせてもらってます(笑)。お金をかけず、空き家をそのまま利用することを、自分たちでは“リユースハウス”と呼んでいるんです」
台所や風呂場、トイレといった水回りも、そのまま問題なく使用できる。建物自体は年月が経っていても、直前まで人が住んでいた家は状態が良い。

人が使う度に、家は綺麗になっていく。
一階居間。ソファーやテーブルも再利用しているもの。
一階居間。ソファーやテーブルも再利用しているもの。

亜也さんの場合、空き家探しは近所の人に「空いてるとこないかな?」と聞いて回ることからスタートした。何件か空き家を見て回るうちに、あることに気付いたという。
「ずっと人がいない家って、入った瞬間に『ここはだめだ』と思う空気感があるんです。そういう意味では、ここは空き家になってそんなに月日が経ってなかったので、雰囲気が明るかった。
家も息をしていると思うので、空気の入れ替えや、住む人の笑い声があることが、すごく大事。この物件もWWOOFの子達が来る度に、どんどん綺麗になっているように感じるんです」
亜也さんのように近所のネットワークがない場合は、市役所や加賀市定住促進協議会のような地元住民との関係性が築けている団体を頼るのが良い、とアドバイスももらった。

昔ながらの家で、「身土不二」の生活を。

加賀市は人口減少も著しく、県内で唯一の「消滅可能性都市*」にも選定されている。空き家問題は、これから加速度的に、ますます深刻になっていくだろう。
「だからこそ、今ある古い家を壊さずに、うまく利用した方が絶対に良い」と亜也さんはハッキリとした口調で言う。
「直せばつかえる家って、すごいことだと思うんです。今パタパタと新築されている家が、果たして50年後に同じ価値があるかというと、そうはいかないと思うし、昔のような技術をもった職人さんだって減っている。
それに、人間はもっと平たく住んだ方が良いと思うんです。よく東京の友人に『マンション暮らしって、“ケージ飼い”みたい』だって言ってるんです。同じ緯度・経度に人間が重なり合って暮らしているって、よく考えると異様ですよね。鶏だって、砂浴びしたり、走り回っているのが自然な姿。私達のモットーは“身土不二(しんどふじ)”。人間の身体と土地は切り離せない関係にある、という意味なのですが、空き家を利用して、もっと土や自然に近い暮らしをした方が良いのではないでしょうか」

*民間研究機関「日本創成会議」の「人口減少問題検討分科会(座長:増田寛也元総務相)」報告書(2014年5月)より。