田舎暮らし、子育て環境、地域の人との交流
その土地の環境や風土にあこがれて移住したいと思っても、実際に生活してみないと分からないことがたくさんあります。 「田舎暮らしは不便?」「子育ての環境はどう?」「地域との付き合いが心配」など、奥能登・珠洲市に移住している20 代から40 代の女性3 人に体験談を聞きました。
能登へのきっかけ
坂本
長野県で看護師として働いていた時、東京で開かれた石川県の伝統産業展をたまたま訪れ、珠洲焼作家の主人と出会いました。それが縁で結婚し、10 年ほど前に嫁いできました。
宇都宮
私も同じく、結婚がきっかけです。2010 年に金沢市から移住してきました。2 年前には長男も誕生し、今は子育て中心の生活を送っています。
志保石
私は珠洲に住みたくて、移住してきました。私と珠洲の接点は大学生の時、ゼミの一環で珠洲市を訪れたのがきっかけです。もともと田舎暮らしにあこがれがあり、「働くならば能登で」という思いが強くなり、卒業後の14 年3月に移住を決めました。
能登の暮らし
宇都宮
正直、移住前は何もないところと覚悟していました。実際、スーパーなどお店が閉まるのは早いです。でも、洋服など、欲しいものは、ネットショッピングですぐに取り寄せられますし、そんなに不便を感じません。食材は、産直市場の作り手の顔が見える野菜や、新鮮な魚など、本当に満足しています。
志保石
私は、今は市の空き家バンク制度や職場の上司の紹介などで探した一軒家を借りています。これまで住んでいた東京のマンションに比べて、驚くほど広く、家賃も格安です。先日、父が遊びに来た時、「家族で一番、ぜいたくな生活をしている」と、うらやましがっていました(笑)。
坂本
田舎の一軒家は都会では考えられないほど広いこともありますね。また、私は車を持っているのであまり感じませんが、医療機関まで遠く、不安に思う人もいるようです。
志保石
都会の人はそんなにお金がなくても田舎暮らしができると思うかもしれませんが、生活の足として車は不可欠ですし、その維持費を考える必要があります。移住前に少しでも情報を集めておく大切さを実感しました。
自然と触れ合いながらの子育て
坂本
子どもの数が少なく、近くには習塾もありません。ですが、珠洲市では小中一貫教育を進めるなど、特色ある教育を進めています。また、少人数だからこそ、地域の人との触れ合いも多く、そういった経験が子どもたちの成長につながっていけばと考えています。
宇都宮
私もそう思います。ここだからこそ体験できることがたくさんあります。例えば、自然との触れ合いもその一つ。 ここは海も山も近く、NPO などが中心となって里山里海から学ぶプログラムも数多く開いています。不安よりもどう成長していくか楽しみの方が格段に大きいですね。
地域の人との出会い
坂本
主人が青年会議所に入っていた関係で、交流の輪が広がっていきました。当初は、能登の人たちの飾らない態度と方言に、とっつきにくさを感じるかもしれませんが、 皆さん、一度心を開くと、本当に親身になってくれる方ばかりで、今は方言の中ににじむ能登の温もりをいつも感じています。
志保石
田舎で一人暮らしをしていると、近所の皆さんがサザエや野菜などを分けてくれたり、「何かあったらいつでも言いや」と声をかけてくれたりと、いろいろと応援してくれます。
宇都宮
奥能登では移住者同士の交流も盛んで、その中には行動的な方がたくさんいます。趣味だった手芸作品の販売を始めたのも、ここで知り合った友達に背中を押されたことが大きいですね。今は趣味仲間と開くイベントや道の駅でアクセサリーなどを販売しています。
お金に依存しない豊かさがある
志保石
大都市はお金がないと何も楽しめません。珠洲ならば嫌なことがあっても、海や山を見ているだけで癒やされます。都会にはない豊かさがあると思います。
坂本
里山里海が広がる景色、そこからとれる食材は絶対一級品。そんな珠洲の魅力を伝えるため、海を望む民宿をオープンしました。ここやレストランを訪れたお客様からは、「懐かしさを感じる」という声を聞くことが多く、日本人の心に通じるものが能登にはあるのだと思います。
宇都宮
私も二人に同感です。移住して1 年ほどは、戻りたい気持ちが大きかったのですが、お友達も増え、生活に慣れた今は、「もう一生、珠洲で暮らしたい!」という思いが強いですね。