金沢市(東京都から)古書店「オヨヨ書林」オーナー
文化や伝統を大切にするまちで古本屋を
もともとは、東京の大学在学中に自宅アパートに増える一方の本を、気軽な気持ちで通信販売するようになりました。それが古書店をはじめたきっかけです。卒業後には本格的に本を扱うようになり、東京の根津や青山に店を構えました。
そのまま東京で生活を続けてもよかったのですが、関東の古書業界は成熟している部分があり、「新しい土地で新しいことをやってみたい」という気持ちを抱くようになりました。
商店街の中ほどに位置する「オヨヨ書林」。印象的な店名は、かつて繰り返し読んだ小説の登場人物にちなんでいる
金沢は、江戸時代に加賀藩が伝統工芸の推奨とともに熱心に本を集め、「天下の書府」と呼ばれていました。その名残りか、今もまちの規模と比較すると古書店がたくさんあります。
そのような土壌に加え、兼六園や金沢21世紀美術館の散策ついでに古書店に立ち寄ってくれる観光客が多いと予想し、出身地の富山ではなく、金沢で開業しました。最初は現在の店舗からほど近い場所にあるビルの中にオープンし、この場所が空いたので移転しました。
兼六園:江戸時代に加賀藩の歴代藩主が約160年もの歳月をかけて作庭した大名庭園。日本三大名園のひとつ
金沢21世紀美術館:「散歩がてらよく訪れます」(山崎さん)
気軽にふらりと入れる敷居の低い古本屋が理想
インテリアにはこだわりませんが、古本屋は敷居が高いと思っている人も、気軽にふらりと立ち寄れる場所にしたいですね。
移転先の商店街は、店主の顔が見えるこだわりの店が多く、独特の雰囲気があります。また、「ご近所さん」的なコミュニティ意識がしっかりと残っているのも、好ましく感じます。店には「フク」というネコがいますが、フクも僕同様、近所の先輩ネコと交流を深めているようです(笑)。
壁一面に本が並ぶ店内で。古い建屋の店舗がおしゃれな雰囲気
まちのコンパクトさが暮らしやすさ
3年ほど前には、地元の古書店と共同で富山県にも2軒の古書店をオープンさせました。 東京と金沢、そのどちらにもいいところがあると思いますが、僕にとって金沢の暮らしは自宅、仕事場、好きな美術館や風景など、必要な「こと」や「もの」すべてが近くにある。
この「まちのコンパクトさ」が金沢の暮らしをとても豊かなものにしてくれていると思います。
自宅は店から徒歩で10分ほど。天気のいい日は犀川の河川敷を自転車で通勤。