都会すぎず田舎すぎない“いい”バランス〈 映画監督 岨手由貴子 〉
東京に住んでいましたが、良い環境で子育てしたいと思い、2017年9月に石川県に移住しました。映画監督でフリーランスだったため保育園に入りづらかったこと、子連れで遊びに行く場所に限界を感じていたことも理由にあります。
金沢市を選んだのは、私の母が能登出身で、父は金沢大学の卒業生だったこと、また夫は富山県出身で、何かと縁があり金沢に足を運ぶことが多かったからです。その中で感じた、都会すぎず田舎すぎない“いい”バランスに惹かれて、移住先に決めました。
一番心配だったのが、仕事をどう続けていくかでした。映画監督という仕事柄、打ち合わせやロケハンなど、面と向かってでないとできないこともあります。撮影で家を開けることも多いので、仕事と子育てを、どう両立させるかが問題でした。
もう一つは夫の転職先です。東京では広告関係の仕事についていたのですが、かなりハードな働き方をしていたので、よく体を壊していました。私も夫も「収入が下がっても、健康的な人間らしい生活ができる仕事がしたい」と望んでいたことも移住のきっかけのひとつです。夫の仕事をどうしようかと考えていましたが、3カ月ほどで無事に転職先が決まり、移住を決意しました。
私の仕事面で不安はあったものの、まず始めてみて、問題があればその都度解決していくことにしました。現在は月に1・2回は東京に通いつつ、ビデオ会議やビデオ打ち合わせで対応しています。息子(5歳)は平日は幼稚園に通っていますが、それ以外の時間は主人または私の父母、もしくは主人の父母に見てもらっています。両父母が協力的なので、とてもありがたいですね。
週末は親子でイベントやマルシェへ。カフェやパン屋も充実して楽しい
移住後すぐは賃貸物件に住んでいました。移住する前からネットやSNSでリサーチをして、住みたいエリアを決めました。元々家を建てたかったので、まずは賃貸に住みながら土地勘をつけ、家を建てる場所を探す計画でした。その後、希望の土地を見つけ2019年の4月に新居を建てました。自宅そばには大きな図書館やスーパー、カフェ、子どもが遊べる公園や地域の交流センターもあり、とても住みやすいです。
休日は、石川県内や近県のマルシェやイベントに足を運んだり、その付近の飲食店や公園などを巡ったりするのが楽しみです。東京では車を持っていなかったので、子連れのお出かけがとても大変でした。移住してからは、市内を含め県内いろいろな場所に車で出かけています。
金沢は、能登地方や加賀地方、近県にも車で1時間弱で行けるアクセスの良さも魅力です。お気に入りの場所は「千里浜なぎさドライブウェイ」、砂浜に車を停車してピクニックするのがおすすめです。その後、「道の駅 のと千里浜」に寄って、センスのある地元の名産品や地の野菜を見ることも。金沢市内にも、おしゃれなカフェや美味しいパン屋が多いのでうれしいです。
山川海が近い。四季折々の豊かさを感じられる「人間らしい暮らし」。
じっくりリサーチしてから移住したので、住む前と後の印象は変わりません。今、良かったと感じているのは、やはり「人間らしい暮らしができる」ということでしょうか。
山や川、海も近く、四季の自然の変化、季節ごとに違う豊かな食を肌で感じられます。夏祭りや花火大会といった季節の地域イベントやワークショップも多くあり、息子も楽しんでいます。冬は、雪が降ると寒い……などマイナス面もありますが、私が長野県、夫も富山県出身で、育った環境と近かったおかげもあってかイメージがつきやすく、暮らしのリズムにもすぐに馴染みました。
都会に住むのにちょっと疲れてしまった、でも地方のイメージによくある“大自然に囲まれた暮らし”に不安がある人には、金沢をおすすめします。金沢は、転勤で来た人や移住して来た人も多い場所で風通しも良く、人付き合いのしやすさも住みやすさのポイントだと思います。
市内にある浅野川、犀川は、個人的にとてもお気に入りの場所です。両岸の風情がとても良く、いつかそこをロケ地として映画を撮ってみたいと思っています。
岨手 由貴子(そで ゆきこ)さん
長野県出身
金沢市在住
移住して2年半(2017年9月に移住)
家族構成 3人(本人、夫、息子)
職業 映画監督、脚本家