池田 勝さん
積み上げたキャリアを「地域おこし協力隊」として能登で活かす
大阪でずっとサラリーマンとして働いてきましたが、2022年にその生活に区切りをつけ、石川県の宝達志水町へ移住しました。いつか地方で自分のペースで好きなことをしながら暮らしたいという思いがあったので、移住専門のサイトで、自分に合う場所や働き方を探していました。
そんな中で目に留まったのが、宝達志水町の「地域おこし協力隊」で募集していた、移住コーディネーターの仕事でした。空き家バンクの管理や運営を担う人材を探しているという内容で、実はそれまで能登のことはほとんど知らなかったのですが、前職が不動産や建築関係の仕事だったので、これなら自分の経験が活かせるかもしれないと感じ、応募して移住しました。
不動産関係は、もともと知識のある分野だったこともあって、空き家バンクの業務では一定の成果を出すことができ、3年間の任期を無事に終えることができました。ただ、その後任がなかなか決まらなかったこともあり、現在も業務委託という形で役場から仕事をいただき、引き続き地域に関わらせてもらっています。

能登で広がる、人とのつながりの輪
漠然と田舎で生活したい気持ちはあったものの、どこに住みたいのかは特になかったんです。移住情報を探しているうちに、移住コーディネーターの仕事を見つけたことがきっかけで、宝達志水町を選びました。
昔から引っ越しが多く、いろんな土地で暮らしていたので、新しい土地にいくことには抵抗がなかったですね。ただ、初めてこの町を訪れた時は、まわりに明かりがなくて、「本当にここで暮らしていけるのかな」と正直少し不安に感じたのも事実です。それでも、近くにコンビニを見つけた瞬間に「あ、これならなんとかなる!」とふっと気持ちが軽くなったのを今でも覚えています。
現在は、宝達志水町と空き家対策業務に励む傍ら、念願だったライダーズハウスの運営も行っています。これは、若い頃にバイクで北海道を一周した経験から、旅をする人たちが立ち寄れる場所をつくりたいと思っていたんです。さらに、先輩移住者が開いたシェアカフェで、ときどき、たこ焼き屋もしています。
この町に移住してからは、同じように外からやってきた仲間たちとの出会いもあり、人とのつながりが大きく広がりました。今は、この土地でいろんな人と交流できる日々に、とても面白さとやりがいを感じています。

「売る」仕事から「つなぐ」仕事へ
以前は長く会社員として営業をしていたので、どうしても「会社の利益追求」が第一でした。振り返ると、あの頃は自分の営業成績や目先の数字ばかりを追って仕事をしていた気がします。
しかし、地域おこし協力隊としてこの町に入り、公的な立場で仕事をするようになってからは、損得勘定を抜きにして「純粋に人のために動いている」という確かな実感を得られるようになりました。これは私にとって、大きな変化でしたね。
40歳を過ぎてから、これまでの環境を手放してこの土地へ来たので、地域に対して何かしらの役に立たなければ意味がない、という思いが強かったです。
私には宅建士としての知識と経験があったので、それを活かして移住を希望される方に家を紹介し、このまちの人口が増えるお手伝いができた瞬間は、自分の知識が誰かの人生や地域の未来に直結していることを実感できて、本当に嬉しいですし、深いやりがいを感じます。
もちろん、地方での暮らしも仕事も、良いことばかりではありません。ですが、どんな時であっても、ここでの仕事や日々の生活そのものを心から楽しめている自分がいます。豊かな自然に囲まれ、人の温もりに触れる毎日が充実していますから、能登へ来てから今日に至るまで、大変でつらいと感じたことは、本当に一度もないんですよ。
移住者の熱い思いで、人が集まり、楽しむまちづくりを
宝達志水町という場所は、本当にポテンシャルに満ちた面白い町です。能登最高峰の「宝達山」と、波打ち際を車で走れる「千里浜なぎさドライブウェイ」に挟まれて、山の頂きから海まで、ほんのわずかな時間で行き来できてしまう、他にはなかなかない素晴らしい地域です。
もちろん、日本海側ならではの自然の厳しさもあり、天候が荒れる日も少なくありません。だからこそ、春の日差しを感じる時の喜びはひとしおです。四季の移ろいを肌で感じ、その気候のギャップが生きている実感を与えてくれています。
この豊かな町でのこれからの私の目標は、この土地でご縁あって出会った移住者の仲間たちと一緒に、何かワクワクするような仕掛けやイベントを生み出し、まちの活性化に繋げていくことです。
そのひとつが、長くスナックをされていた方から、先輩移住者が引き継いだ「シェアカフェ」です。まちを盛り上げたいと熱い思いを持った移住者たちが、日替わりで思い思いのお店を出して地元の方とも交流している、憩いの場です。カラオケ大会も開催して盛り上がっていますよ。
これから、この町の人口を増やし、さらに活気あふれる未来へ繋いでいくためには、外からの「新しい風」を吹き込むことが必要不可欠だと感じています。私たちのような移住者ならではの目線で楽しい企画を考えつつ、地元の方々にも一緒になって楽しんでもらえたら嬉しいし、町全体が明るく活気づき、宝達志水町に自然と人が集まってくれたらいいですね。

移住後に、自分らしく生きていくために
私自身、ここでの暮らしは想像していた以上に面白く、毎日を心から楽しんで生活しています。
これからこの宝達志水町への移住希望者の方には、まず、このまちに住んでいる人たちに会っていただきたいです。
もちろん、宝達志水町は海や山に囲まれた素晴らしい環境ですが、極端な話、ただ自然が豊かな場所なら、日本全国どこにでもありますよね。
私たちが地方で生きていく上で本当に必要なこと、そして日々の暮らしを豊かにしてくれるもの。それは、どんな人と関わって生きていくかに尽きると思います。
移住した後に、自分がここでどんな人生を歩んでいくのか、その解像度を上げてリアルにイメージしていただくためにも、今ここに住んで、この町を愛している人たちに直接会って、生の声を聞いてもらう。それが、自分に合った移住を見極めるための、一番の近道だと思っています。

