» 能登で暮らし、自然と向き合う自分らしい生き方

能登で暮らし、自然と向き合う自分らしい生き方

福田 楓さん(千葉県出身)

 

 

“石川県”で、自然に包まれて暮らすという願いを実現して

僕が移住を決めたきっかけは、「石川に住みたい!」という気持ちからでした。
小さい頃に祖母が能登に住んでいて、毎年お祭りの時期になると千葉から家族で遊びに来ていたんです。子どもの頃から何度も訪れていた場所なので、能登は自分にとても馴染みのある、特別な土地でした。

もともと生き物や自然が好きだったこともあり、東京で開かれていた移住イベントで石川県のブースに立ち寄ったことが、移住を具体的に考える大きなきっかけになりました。

石川で暮らすなら、好きな自然と向き合える仕事をしたいと思い、「いしかわ耕稼塾」で農業を学ぶことを決めました。研修を経て、2025年4月からは志賀町里本江(旧富来町)にある「農業組合法人 増穂ファーム」で働き、主に米づくりに携わっています。

子どもの頃に何度も通った能登の風景の中で、今こうして農業に関わりながら暮らしていることに、不思議な縁のようなものも感じています。これからも、この土地でしっかりと経験を積みながら、自分なりに能登の農業に関わっていけたらと思っています。

 

  

 

お日様の下で働く中で見つけた、幸せな生き方

僕が生まれ育ったのは、千葉県の松戸市です。すごく都会というわけではないですが、ここでの暮らしと比べると、やはり空気感はまったく違いますね。

子どもの頃は地元の自然公園で遊ぶことも多くて、もともと自然が好きでした。大学でも「自然環境学科」で学び、自然に関わることにはずっと興味を持っていたと思います。

ただ、大学卒業後は大手の商業施設に就職して、建物の中で働く毎日で、ずっと屋内で過ごしていると、どこか気分が落ち込んでしまうこともあったんです。

移住してからは、お日様の下で体を動かしながら働く毎日になりました。外の空気を感じながら仕事をしていると、自然と気持ちも晴れていき、自分にはこういう生き方が合っているんだな、と改めて感じています。

農家の仕事というと体力勝負のイメージがあるかもしれませんが、実際は機械化が進んでいて、思っていたほど体がきついわけではありません。最近は肥料を撒くためのドローンの免許も取得しましたし、ラジコン草刈機など農業用の機械もいろいろあって、操作していると結構楽しいです。

 

  

 

孤独とは無縁な、地域とのほどよいつながり

実は祖母は、もうずいぶん前から千葉に住んでいるんですが、今では逆に祖母がこの町に“里帰り”してくるようになっていて、僕が迎える立場になりました。なんだか少し不思議な感じもしますが、そんな時間がとても嬉しいですね。

能登に来て感じたのは、同じ農業に関わる人たちのつながりがとても深いことです。仕事でほかの地域に行っても、「あんた、増穂ファームの人か」と気さくに声をかけてもらえることがあって、地域の中で自然と顔を覚えてもらえているんだなと感じます。

移住する前は、地域にうまく馴染めるか少し不安もありました。でも実際に暮らしてみると、地域の方も会社の皆さんも本当に気さくで温かい。採れたての野菜を分けてくれたり、僕が数日前に川で罠を仕掛けて魚を捕まえたときには、元代表から「どうだった?何の魚が獲れた?」と電話がかかってきたりして。仕事と日常の境目がいい意味でゆるやかで、人との距離がとても近いんですよね。

一人暮らしではありますが、周りの人とのつながりがあるおかげで、寂しさを感じる暇もないくらい楽しく過ごしています。

移住するときには、都会では考えられないような価格で一軒家を購入しました。地震の影響で母屋は解体することになりましたが、離れの平屋は無事だったので、今はそこに住んでいます。一人で住むには丁度いい広さなんです。

これからは犬も飼いたいですし、いつか自分の好きな生き物たちに囲まれて暮らせたらいいなと思っています。自然の近くで、そんな生活を少しずつ形にしていきたいですね。

 

 

 

農業を通じて、五感を育てながら暮らす

いま育てているお米は、「ひゃくまん穀」や「コシヒカリ」など、いくつかのブランド米ともち米です。ほかにもメロン栽培にも挑戦しているのですが、去年は大事な時期に僕が体調を崩してしまって、世話が行き届かず、結果的に全部ダメにしてしまいました。農業の難しさを、身をもって感じた出来事でしたね。

ここに来て最初の一年は、とにかく覚えることばかりで、目の前の仕事をこなすのに精一杯でした。でも、その経験があったからこそ、少しずつ仕事の流れも見えてきました。これからはもっと力をつけて、しっかりと仕事ができるようになりたいと思っています。

そして将来的には、加工品の販路も広げながら、この土地で育ったお米のおいしさを、もっと多くの人に届けていけたらうれしいですね。

能登に来て驚いたことのひとつが、魚の美味しさでした。実は関東にいた頃は、お刺身のおいしさがあまりよく分からなくて、どちらかというと苦手だったんです。でも、ここで食べた魚は本当に驚くほど美味しくて、「魚ってこんなに美味しかったんだ」と初めて実感しました。

自然の近くで暮らしていると、季節や食べ物、空気の変化を肌で感じることができます。こういう場所で生活していると、五感が整っていくような感覚があります。

都会に縛られず、自然が好きな人には、こういう生き方もあるんだということを、これから伝えていけたらいいなと思っています。